AS AN ACTOR
2010年
ケント紙に鉛筆
36×52cm

 

 

 

太平洋戦争の終結後に撮影された、天皇陛下とマッカーサー元帥が並ぶ写真は、現在において、先の戦争における敗戦のイメージと強く結び付けられるものであるが、それはGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)による日本の敗戦というイメージを植え付けるための巧みな演出の撮影であった。しかし、その写真が新聞に掲載された当時、戦時中の価値観を抱き続ける人や、事の成行きを理解していない人々にとっては、必ずしも屈辱的な写真と捉えることはなかったという。そのことは、人は被写体の在り様ではなく、情報によって出来事を理解するということを示している。そこから、歴史はシナリオであり、読み替えが可能であると考えた。会見時には3枚の写真が撮影されたが、実際に人々の目に触れられたものは1枚だけであり、それが現在の我々が認識する歴史となっている。私は、天皇陛下の口が開いているという理由でGHQが不採用とした一見愉快ともとれる表情をした写真を用い、そこから新たなシナリオをつくりだすことを試みた。それが歴史認識についての不確かさを見つめることになるだろうと考えたからだ。天皇陛下のモーニング姿は、どこか喜劇的であり、チャップリンの姿に似ているという理由から、歴史認識の不確かさに対する皮肉をこめ、チャップリンのトレードマークの扮装をさせた新たな舞台に登場させた。しかし、我々はまた、アメリカ合衆国の英雄でありながら、レッドパージにより国を追われるという歴史の定義による明暗を味わったチャップリンの過去を読み解いてしまうかもしれない。