幻影のリタ・ヘイワース

2013年

ミクストメディア

サイズ可変

 

 

 

リタ・ヘイワースはかつてアメリカ合衆国のセックスシンボルに例えられた女優であり、第二次世界大戦中、彼女のピンナップは多くのアメリカの兵士から求められた。広島に原子爆弾を投下した戦闘機であるエノラ・ゲイの操縦席にも彼女のピンナップがあったといわれている。また1946年のビキニ環礁での原子爆弾の実験においては、彼女のヒット映画である「ギルダ」が爆弾の名の由来とされ、その爆弾の内側にはネグリジェ姿のリタの写真(本作に用いた画像)が貼りつけられた。それらのできごとから、我々は彼女の存在を核のイメージと結びつけるだろう。また彼女は晩年にアルツハイマー病を患い記憶の多くを失ったが、彼女の発症を通じて多くの人々がその病を知ることとなった。人や物を破壊し蝕む核、存在の拠り所を失う病、このふたつの無化を背負った、見えない存在である彼女の像(爆弾は爆発されれば写真は燃え、写真は爆発されるまで外界と接触することはない。また、我々は女優としての彼女のイメージを見ることはあっても、彼女の存在に触れることはない。)を、光の屈折からなる幻影として浮かび上がらせることにより、現代における存在の在処や認知についての疑問を提示した。またイメージや背景を葬り去り、人間の存在そのものを見つめることを試みた。